ポンピドゥーセンター傑作展@東京都美術館

20年くらい前、ぼくがまだ学生だったころにパリのポンピドゥーセンターに行ったことがあります。知人にパリに行くのならあそこには絶対行くべきだぞ!と言われ、いそいそとバックパックを背負って行ってきたのを覚えています。ただその頃どんなテーマの展示をしていたのかまったく覚えていません。覚えていることといえば、あのチューブのようなエスカレーターに乗ったなぁということくらいです。お恥ずかしいかぎりですが、作品を鑑賞するというよりも、ポンピドゥーセンターに行くということが目的だったのですね。人類の残した宝を存分に味わい尽くすというポンピドゥーセンターでの本来のミッションが未達成だったわけです。

さあ、20年越しのリベンジですぞ。

上野駅に着くと、連休中ということもあり人でごった返していましたので一瞬ドキリとしました。先日東京都美術館で開かれた若冲展では長蛇の列に目がうつろになるという経験をした後だけに、すわ、デジャブ?という言葉が脳裏によぎりました。でもこっちの展覧会はぜんぜん大丈夫でした。ウェイティング時間0分で入場できました。

本展では、1906年から1977年までのポンピドーセンターのコレクションの中から1年ごとに1作家1作品を時系列に展示していきます。この時系列というのがミソで、全体を通して時代の大きなうねりのようなものを感じることができます。なんとかイズムとかの体系ごとに美術史をたどるような展覧会はよくあると思います。それはそれで教科書的で体系を理解しやすいのですが、たまにはこういう予定調和ではない時代のうねりを感じるような展覧会も面白いですね。

あと時系列で展示してあることの利点がもう一点あります。普通の展覧会ってどこまで続くのかがよくわからないじゃないですか。あれって、ゴールのわからないマラソンみたいなものでとても疲れませんか?でも、時系列で年号がふってあると、あと残りがどれくらいあるというのがわかるので体力と集中力の配分ができるんですね。おかげで、休憩をはさみながらおちついて作品鑑賞ができます。(この感覚、ぼくだけですかね?)

それにしてもピカソ、マチス、シャガールからデュシャン、クリストまで美術界の巨匠という巨匠の作品が所狭しと並んでいるわけですから、これはえらいことです。絵画、彫刻、写真、プロダクトにいたるまで、全品傑作です。前菜もスープもありません。全品メインです。ステーキ食べて、天ぷら食べて、鮨食べて、北京ダック食べてみたいな感じです。出口にたどり着くころにはお腹いっぱいになること間違いなしです。

 

そうして、ポンピドゥーセンター約70年のコレクションを20年越しに味わい尽くし、心地よい疲労感とともに達成感を噛み締めるのでありました。めでたし。めでたし。