木々との対話展@東京都美術館

ポンピドゥーセンター傑作展と同時開催されていましたので、こちらにも行ってきました。ポンピドゥーセンター展とはうって変わって日本の現代芸術家5人(舟越桂、須田悦弘、土屋仁応、國安孝昌、田窪恭治)による木の素材を活かした作品を集めた展覧会です。「再生」をキーワードに、永遠と瞬間、生と死という相反する要素を複雑に包含する作品で構成しています。

冒頭の写真は、土屋仁応(つちやよしまさ)の作品です。動物の赤ちゃんをモチーフにした木彫りの彫刻です。たぶん女子が見たら「キャー!かわいいー!」と奇声をあげると思います。そのぐらいかわいいです。このやわらかく、やさしい佇まいは、とても木彫りとは思えません。きゅーっとつむった目にもガラス玉のようなものが入ってまして、本当に生きてるみたいな眼光を宿しています。「生命を吹き込まれた」という表現がありますが、この彫刻作品は「生命を彫り込まれた」と言ってもいいかもしれません。とにかく言葉や写真では伝わらない存在感がありますので、ぜひ実物を見ていただくことをお勧めします。
他にも、鹿やら羊やら架空の動物やらもたくさんいまして、この会場のこの一角はちょっとした動物ワンダーランドな様相をなしています。

本展では、彫刻界の巨匠ともいえる船越桂の作品も観ることができます。土屋仁応のような気鋭の彫刻家と船越桂のような大家の作品を対比して楽しめるのは、このような企画展ならではですね。
土屋仁応の彫刻をやさしい佇まいとするならば、御大、舟越桂の彫刻は恐ろしい佇まいとでも申しましょうか。
両者ともその彫刻作品に生命の息吹を確かに感じるのですが、その気配があまりにも違うのです。両者が並ぶことでその違いの本質が一層際立つのです。人間という存在のやさしさや怖さ。我々がそうした相反し矛盾した存在であることを否応なしに感じさせてくれるのです。

本展は、一つの作品や作家からではなく、複数の作品や作家を通してテーマを浮き彫りにするというキュレーションの真骨頂ともいうべき企画展です。

ポンピドゥーセンター展でお腹いっぱいでも、別腹でいけちゃう。そんな展覧会だと思います。

船越桂の作品。ポスターをパチリ。

船越桂の作品。ポスターをパチリ。