渋谷区のはじっこエリアに越してから、かれこれ15年くらいになります。
新婚生活をスタートさせたのがこの地で、二人の子宝にも恵まれました。子供はすくすく育って、上の子なんて来年から中学生ですよ。時がたつのは早いなぁ……。

さて、そんな我が家のソウルフードと言えば、ラープです。
ラープとは、タイ料理のメニューのひとつでひき肉のサラダみたいなものです。で、そのラープを我々一家がどこで食すのかというと、笹塚駅と幡ヶ谷駅の中間くらいにあるタイ料理屋のセラドンさんでした。

セラドンさんのラープは絶品で、ひき肉とハーブが混然一体となって織りなすハーモニーは筆舌に尽くしがたく、あえてムエタイに例えるのなら、ローキックかミドルキックかどっち?と防御に備えるも、次の瞬間には脳天にハイキックをもらってノックアウトされ、気づいたときには控室のベッドの上で天井の明かりを見つめている、というようなおいしさなのです。
要するに何が言いたいかというと、とにかくうまい!ということです。

そんなセラドンさんが、今年の9月一杯で閉店することになりました。
ガーン……
閉店の知らせを聞いた時のぼくの第一声「困ります」。だってぼくの心の中では――「え?もうあのラープを一生食べれないのかよ!?そんなのないぜ!うそだと言ってくれよ!な?おい、頼むよ!黙ってないで言ってくれよ、うそだって!冗談だろ?ドッキリだろ?ウグッヘグッ、本当は季節はずれの夏休み的にちょっと休むだけなんでしょ?頼むよ……、そりゃないぜ……ウグッヘグッ、グスン、ヘグッヘグッウグッ……」

閉店と聞いた直後はちょっとショックで、ちゃんと伝えられませんした。

家族でラープをつついたかけがえのない時間は、美しい思い出として我々の心に刻まれています。

声を大にして言わせていただきます。
本当に、本当にありがとうございました。