若冲展@東京都美術館

に行って参りました。行列がえげつないことになっているという話は聞いていました。全国から高齢者の方々も押し寄せて、平日昼間に関わらず3時間待ちが当たり前という話でした。

そこで私は、金曜日の夜閉館1時間前に行けば良いだろうと算段を立てました。数年前に東京国立博物館で行われた長谷川等伯展は、この作戦が功を奏して、すんなり入場。それなりに人の引いた館内をゆっくり鑑賞できました。

今回もこれで楽勝だなと高をくくっていたのですが、そうは問屋がおろしませんでした。

金曜日は20時閉館なので、狙い通り19時に到着。すると予想に反して「長蛇の列」がそこにはあるのでした。いや長蛇というにはそのスケールに相応しくなく、ヘビというよりはドラゴン。天までの昇ろうかという「昇竜の列」がそこにはあるのでした。

19時の時点で、210分待ち。入場できるのが、22時半ですよ。マジか?そんな展覧会があるのか?この世に?いや、この世のものとも思えない世界がそこには必ずあるのかもしれない。(遠い目)

約3時間後、入場口近く。会場から出てくる人たちとすれ違います。彼らの目は一様にうつろです。意識朦朧とふらふら歩きまるで廃人のようです。そしてよく耳をすますと腰が痛いだの、膝が痛いだの、足の裏が痛いだのとうめき声も聞こえてきます。

一体彼らが見たものはなんだったのか?そこは極楽なのか?それとも・・・

期待と恐怖が入り混じったような感情のまま、いよいよ入場する番がやってきました。

 

これを何と言ったらいいでしょう?

圧巻?

あんぐり?

めくるめく?

そう、めくるめく!が一番しっくりきます。まさにこの世のものとは思えない、めくるめく若冲ワールドがそこには広がっていたのです。

『動植綵絵』(どうしょく さいえ)、全30幅。鳥、鳳凰、魚、花、様々な動植物が展示室をぐるりと一周埋め尽くす。この30幅と『釈迦三尊像』3幅が同時公開されるのは史上初だそうです。ありがたや、ありがたや。

それにても、人、人、人、である。人だかりで後頭部ばっかりで絵の下の方がさっぱり見えませんよ・・・

ここで、はっとします。

若冲の絵の中に人はいない。ひょっとして、この絵の前に群がることになるぼくら人間も含めて、作品の一部なのではないか、と。

魂は滅びることがなく、死んでも何度も生まれ変わってこの世に戻ってくるという輪廻転生という仏教的な世界観がこの絵のテーマだとするならば、そこに人間も含まれて当然なわけで、むしろいないことが不自然です。
そして、この絵が生まれた300年後の未来に存在する我々がこの絵の前にいることにこそ真の意味があるのではないでしょうか?

この『動植綵絵』30幅と『釈迦三尊像』3幅、そして人、人、人でごった返すこの展示室に、宇宙の存在を確かに感じたのはぼくだけではないでしょう。

そりゃあ目もうつろになりますよ。