地味にウマいものってありますよね。

ぼくにとっての地味にウマいもの、それは黄ニラの炒めものです。写真は幡ヶ谷の中華の名店、龍口酒家のものです。先日、お任せコースの予定調和について書きました。リー麺の絶賛だけして、とても地味な黄ニラの炒めもののことを書くのを忘れていました。

この黄ニラの炒め物ですが毎回コースの序盤で登場します。黄ニラと小さく刻んだ自家製ベーコンをざっと炒めてあります。見ての通りとても地味なルックスです。龍口酒家の料理の中でももっとも地味な料理のひとつでないかと思っています。ただ見た目は地味だけど滋味に富んでいます。料理はとてもシンプルなんですが、味はとても豊かで深い。一口食べると黄ニラの香りとベーコンの香りが混然一体となって幸せが口に広がっていきます。派手にぱーっとうまい!というよりは、じわじわくる美味しさ。
なんなんでしょうこの感じ?

平凡な日常の中に幸福を見出す小津映画のような深淵なるものがそこにある気がします。小津安二郎が映画というメディアを使って伝えようとしたそれを、シェフは黄ニラの炒めものをメディアにして我々に届けてくれているのではないでしょうか。

それにしてもコースの一皿として量が少ないのがいつもながらに口惜しい。こっちとしては丼いっぱいでも食べられる勢いなんですけどね。