初心者のぼくが恐れ多くも井戸茶碗風を目指した器です。

井戸茶碗とは、一井戸、二楽、三唐津と言われるほどに茶人たちの間で愛される茶碗です。元々は高麗で作られ雑器として使われていたものですが、海を渡った日本でその詫びた風情を茶人たちに見出され、茶器として重用されるようになったと言われています(諸説あり)。

そんな天下の井戸茶碗を手捻り(てびねり)でチャレンジしました。
手捻りとは、ろくろを使わずに手でこねこねしながら成形していく手法です。本来井戸茶碗はろくろでつくります。ろくろで引いた指の跡も井戸茶碗の見所だったりしますので、手捻りで作るのには無理があるのですが、なんとか雰囲気をだそうと、この器もわざとらしくろくろ目っぽいエッジをヘラで削ってつけています。

なぜ、そんなことをしてまで手捻りで井戸茶碗風のうつわを作ろうとしたか?
はい、初心者すぎてろくろが使えないからです。

でもとても勉強にはなりました。以前参加した赤楽茶碗の会でも思ったんですが、やっぱり作ってみるのが一番勉強になるんですよね。

先ほどのろくろ目もそうですが、高台の形が竹の節みたいに削られてるとか、高台中が兜巾(ときん)という形状でとんがってるとか、井戸茶碗の約束事が色々と見えてきます。そしてあの井戸茶碗の雄大な造形を生み出すことがいかに難しいことか、梅花皮(かいらぎ)と呼ばれる釉薬の縮れがなんと奇跡的なことであるかと……(いつの日かぼくも梅花皮つくってみたいなぁ)。

この紛うことなき雑器を見ながら、プロの仕事がいかに超絶かが実感できます。
自ら磨き上げた技で魅せるという意味において、イチローとか中村俊輔とか一流のプロスポーツ選手と同じ地平に、一流の陶芸家もいるのだなとリスペクトが止まりません。