没後10年 ナムジュン・パイク「2020年 笑っているのは誰 ?+?=??」
@ワタリウム美術館

先日行ってきたナムジュン・パイクの展覧会で、展示が模様替えされたのでまた行ってきました。

前回の展示は、パイク初期の1956年から1989年までの作品を中心に集められていました。ドローイングの作品などが多数展示されていて、とても新鮮なパイク展でありました。今回は、1990年以降の作品を中心に展開します。

ヨーゼフ・ボイスとのコレボレーションによるインスタレーションなどを紹介する一部屋があります。ヨーゼフ・ボイスと言えば、「私はアメリカが好き、アメリカも私が好き」というタイトルのインスタレーションが有名です。ドイツ人である彼がアメリカのギャラリーで、コヨーテと一緒に一週間を暮らし実際のアメリカ人とは接触しないというインスタレーションです。コヨーテは、アメリカの先住民の間では神聖化された生き物です。いわば先住民の象徴でもあります。そのコヨーテと暮らしアメリカ人と接触しないということは、先住民を追いやった現代アメリカ人への痛烈な皮肉とも言えるのです。
そのボイスを模したであろう作品が冒頭の写真です。コヨーテのはく製と帽子を被ったこのTVロボット(?)は、アメリカ人だけでなく、現代人への痛烈な皮肉であり、当事者としてのボイス本人の自虐ともとれます。

ボイスもパイクもとっくに亡くなってしまってはいますが、こうした分身を後世に残して今もなお声高に訴えかけているのです。そう彼らの作品は声高なのです。

前後半この展覧会を見て感じたのは、アートというもので社会を変えて行こうという気概のようなものです。なんというか、この時代のパイクをはじめとした芸術家たちの熱量は圧倒的だったように思います。
今の時代の現代アーティストって、もうちょいクルーに斜に構えているような気がするんですよね。まあ、その斜に構えた視線の角度が普通の人と違うから芸術家たる所以なのでしょうけど。

なにはともあれ、ナムジュン・パイクの熱気むんむんを肌に感じて、熱い血潮がたぎりました。