オランダのモダンデザイン展@東京オペラシティー アートギャラリー

ぼくにとってのオランダトリオといえば、欧州サッカー界を席巻したACミランのオランダトリオ、ファンバステン、フリット、ライカールトです。当時彼らが世界に与えた衝撃といったら未曾有のものでありました。あの頃のACミランは、システム的でありながら創造性を兼ね備えるという美しさにおいて、まさに別次元でありました。

本展では、モダンデザインにおけるオランダトリオが登場します。ディック・ブルーナ、建築家ヘリット・リートフェルトという二大巨匠に加え、リートフェルトに影響をうけたコー・フェルズーの指導のもと制作されたオランダの国民的玩具シリーズADO(アド)が日本で初めて紹介されます。

本展では、とりわけディック・ブルーナの原画や制作過程のスケッチや切り絵が興味深かったです。
ディック・ブルーナと言えば、だれもが知っているミッフィちゃんの絵本なわけですが、その絵がどのように描かれているのかが明らかにされます。最初にトレーシングペーパーなどに鉛筆で下書きをして、線が決まったら厚紙に溝ができるように強い筆圧で線をなぞります。その筆圧でできた溝にペンで清書します。その際の手の震えが、あのディック・ブルーナ的な線のびびりを生むそうです。そして、その線を透明フィルムに複写し、透明フィルムの下にブルーナカラーと呼ばれる6色の色紙のきりばりして色を決めていきます。

自分が子供のころから見ていたあの絵がこんなふうに描かれていたのか!と齢40にして目がキラキラするのでありました。童心蘇るとはこのことですね。

そんな貴重な原画に加えまして、赤目の熊でお馴染みのブラックベアシリーズの巨大ポスターの連張りなんかも圧巻です。グラフィックデザイン界の巨人の足跡を見渡せる良い展覧会だと思います。

ディック・ブルーナをはじめとした本展で紹介されるオランダトリオ。シンプルな要素の構成でありながら、観るものに無限の世界の広がりと感動を与えてくれるという意味において、サッカー界でもデザイン界でもオランダトリオは、やはり同じ血が根底に流れているのだなと確信するのでありました。