冒頭の建築物の屋根は、千駄ヶ谷駅前の東京体育館のものです。槇文彦設計です。
槇文彦氏と言えば、新国立競技場のザハ・ハディト案への批判で世間の耳目を集めました。

お茶の間の理解的には、保守的で気難しい老年の建築家が、あまりにも斬新なザハ案に反対しているという構図だったと思います。

でも、この東京体育館を見ていただければわかるように、槇文彦が必ずしも保守的なだけの建築家ではないことは一目瞭然です。この体育館の屋根だって何を間違ったかUFOみたいですよね。

槇文彦の批判の趣旨は、巨大すぎるザハの新国立競技場案は、外苑という土地の歴史と文化に根付いたデザインでないからイケてないということでした。

ザハの案が良かった悪かったというのは置いておいて、圧倒的な造形でコンペを勝ち抜いたものを、同じプレイヤーである建築家が真っ向からこき下ろすということに驚きました。建築の世界の話だけではなくて、あのシチュエーションで声を上げて矢面に立つのって、なかなかできるものではありません。
自分が同じ立場であったとして、いくら同業者に批判的なことを思ったとしても、たぶん日和ってるに違いないと思う訳ですよ。

自分の信念に従って動く姿勢は、本当にカッケーなと思いました。

千駄ヶ谷の東京体育館の前を通る度に背筋の伸びる思いがします。