京橋のお鮨屋さん「与志乃 (よしの) 」です。

昭和二十四年創業の老舗で、かつては「久兵衛」「奈可田」と並び銀座の寿司御三家に数えられた名店です。
この店から「すきやばし次郎」の小野二郎氏、「鮨 水谷」の水谷八郎氏、「鮨 松波」の松波順一郎氏、「鮨 青木」の青木利勝氏らの巨人達を輩出し、銀座江戸前鮨の系譜の幕開けに燦然たるその名を刻むのであります。

そんな「与志乃 (よしの) 」の2代目の大将は、先代のころの小話をいろいろしてくれます。
闇米時代の鮨屋の営業のため、目立たないように二階に店を作ったとこと。見回りにくる役人も下から、「まさか営業してないだろうな?」と声をかけてくれたりと実は大目にみてくれていたこと。
戦地に赴くと、すし職人だったのでたまに握るとヒーローになり、上官からも特別扱いされててあんまり怒られなかったとのこと。
面白いなぁ。
常連さんもいて合いの手いれながら話が進んでいくのだけど、たぶん常連さんからしたら、何度も聞いてる話なのではないか?と思いつつ、客も含めて場の空気を創っていくこの感じがやっぱり老舗だなぁと思ったりするわけです。

シャリの具合、握りのカタチ、所作、白身の〆具合、えびやアワビやあなごの蒸し具合、煮はまの味付け、卵焼き、それらの江戸前仕事の基盤のすべてがここにあるのだと思います。

そしてそのしっかりとした基盤があってこそ、その上にさまざまな創意を積み上げていくことができるのだと思います。小野次郎氏や水谷八郎氏が江戸前鮨の城を築き、遥か高みまでそびえる天守閣を築くことができたのは、やっぱり頑丈な礎があったればこそと思うのです。

江戸前鮨の礎、系譜の幕開け、大河の源流、総本山、聖地、どれでもいいですが、とにかくそのどれかに遂に来ましたということで感慨もひとしおの夜でした。

 

メモ:

・つまみ

蒸しあわび
眞子がれい 白身 えんがわ
赤貝
いわし

・にぎり

やりいか
小肌
煮はまぐり
中トロ
くるま海老
鳥貝
あなご
かんぴょう
たまご

・酒

賀茂鶴ゴールド