先日、某所でアニサキスに大当たりしてからというもの、生魚に若干の恐怖を抱くようになりました。このままぼくは鮨に対しても恐怖心を抱くようになってしまうのか……。

そんなことは断じてあってはならない!
鮨屋での借りは鮨屋で返す!

ということで、今宵は新橋の鶴八です。
鶴八と言えば、神田神保町の鶴八です。先代の親方の師岡幸夫著の「神田鶴八鮨ばなし」は、鮨ファンにとっては古典と言っても良い一冊でしょう。漫画に例えると、巨人の星みたいなものでしょうか。スポ根のすべてのドラマがここにあるみたいな。

そんな神保町鶴八を源流とするのがここ新橋鶴八です。リベンジの舞台としては申し分ありません。

場所柄でしょうか、雰囲気が神保町に比べて幾分明るく感じます。単純に物理的に照明が明るいのもあるかもしれません。親方以外に二番手の方がつけ場にたっているのもニギニギ感が出ている要因かもしれません。あと、客層もあるのかな。神保町の方ってなんか鮨フリークが親方と真剣勝負みたいな雰囲気があるのだけど、新橋の方はビジネスマンの方々が美味しい肴で酒を楽しんでる感がありますね。
一人で鮨を食べに行くぼくみたいな人間にとっては、どっちのお店も良いのですが、二人で会食的なシチュエーションなら新橋の方が良いかもですね。

同じ鶴八とあって、名刺代わりのご挨拶は、あわびの塩蒸し。そしてヒラメも良かった。神保町で食べたホシガレイは圧巻でしたが、やっぱり冬のヒラメは美味しいなあ。

握りは、コハダ、マグロ、クルマエビ、アナゴと王道路線を堪能。握りは同じ鶴八と言えども、神保町とはかなり違う印象を受けました。季節が違うのでネタの違いを比べることはできませんが、新橋は握りの優しさがすごく特徴的です。口の中に入れるとさっとほどけてネタと一体になります。箸で食べる派にとってはゆるすぎるのではと少し心配になるほどです。

ぼくみたいな若輩は、師岡氏の鮨を食べたことがないので、どちらが本流なのかはわかりませんが、同じ師匠でもこうも違いが出てくるものなのだなあと、少し新鮮な驚きではありました。
新橋と神保町、どっちが本流か?みたいな論争もあるようなのですが、ぼくからしたらどっちも美味しいなあという身も蓋もない結論にしかいたりません。

そして見事に生魚へのリベンジを克服し、お腹いっぱいに胸いっぱいの心地よい達成感とともに店を後にしたことは言うまでもありません。