モニタリングというテレビ番組で高校生くらいの娘が父親に電話をして、「わたしのことどう思う?」と聞くという企画をやっていました。
普段そんなことを言わないらしい父親が「好きだよ」とか「大事だよ」とか電話口で答えます。
それを聞いて照れくさそうに喜んでいる娘とのやり取りを見ていたら涙が出てきました。

ふと思います。
自分のことではめったに泣かないのに、他人の親子を見てどうして涙が出てくるのだろうか?

実は遠い他人だからこそ、良いのでないか?と気づきます。
他人だからこそ、その感動シーンだけに集中できるのでないかと思うのです。
自分のことになると、あんなこととか、こんなこととか、そんなこととか、いろんなことが気が散っててしまい、その感動的な何かが薄まってしまうような気がするのです。

他人だからこその純度100%の親子愛。その強烈な愛を目の当たりにした時に、人はうろたえ涙するのでないでしょうか。

テレビとか映画とか小説とか漫画とか、遠い他人の事の方がそれを我が事として純度を高く受け止めることができるのでないかと思うのです。

だから、他人の物語の方が泣きやすい。

ぼくは父親が死んだときに泣きませんでした。いや少しだけ泣いたか。
でもテレビを見て泣く方がずっと簡単なのです。