先日行った代々木上原の「エンボカ」で、蛤の窯焼きをオーダーしたところ、もんじゃのヘラが一緒に供されました。

これがあると、蛤を食べる時にいつも苦戦するあの貝柱が、いとも簡単にすっとはがすことができます。今までの苦労がなんだったのか?と虚しくすらなります。目から鱗がおちそうになりました。顎がはずれそうになりました。四十余年生きてきましてこんな再発見があろうとは思いもよりませんでした。

茶道の世界で、道具の「見立て」という言葉があります。ある道具を本来の用途ではなく、別の用途で使うときに使います。千利休さんが、漁師の魚籠を花入れに見立てたりしたのは有名な話です。

このもんじゃのヘラを、ハマグリの貝柱はがしに使うというアイデアは、見事な見立てだなぁと思わずにはいられません。

よくよく考えるとエンボカさんの料理が見立てのオンパレードだということに気づきます。
野沢菜のピザはチーズの見立てとしてゴマ豆腐が使われます。デザートに見立てたフルーツのピザなんてものもあります。そもそもユニークな具材のピザがいろいろありますが、それらはピザに見立てたオリジナル料理とすら思えてきました。見立ての精神ここに極まれり!

利休さん、こんなところにもお茶の心は根付いています。