海のハンター展@国立科学博物館

に子供を連れて行ってきました。入場に20分くらい並び、会場の中もチビッ子たちとその家族連れで大混雑です。これだけ混み混みの展覧会も珍しいです。今年行った展覧会の中だと若冲展の次に混んでましたよ。

海で捕食する生物たちを、模型や標本やビデオ等々あの手この手で紹介します。太古の恐竜からはじまりシャチや色々な種類のサメ、深海魚や鳥まで、さまざまな展示に子供たちがワーワー歓声をあげて大盛り上がりです。

本展の目玉は、本邦初公開であるホウジロサメの全身3.2mのホルマリン漬けの標本だそうです。冒頭の写真のサメがそれです。ただ他にももっと大きな生物の模型が天井からこれ見よがしに吊るされてもいますし、そうした模型の方がある意味本物っぽかったりするものですから、この標本に対する子供たちの反応はいまいちです。目玉のはずなのに意外とひっそりとこのホオジロサメは佇んでいます。

サメのホルマリン漬けと言えば、ダミアン・ハーストですよね。
言わずと知れた現代アート界のスーパースターです。同じサメのホルマリン漬けなのに、一方は現代アート作品で何億円もの価値があるのに対して、一方はただの標本として博物館では模型よりも人気が無かったりします。

この差は一体なんなのでしょうか?

まず水槽が違います。プロダクトとしてのデザインがニトリとカッシーナくらい違います。サメの顔つきも大分違います。怖さ的にはポニョとジョーズくらい違います。ハーストのそれは口がガーッと開いて牙をむいていてとても怖い顔をしています。そして、ぼくが一番の違うと思っているのはそうした見た目ではなく、作品のタイトルの有無です。ハーストの作品のタイトルは次のようなものです。

――「生者の心における死の物理的不可能性 (The Physical Impossibility of Death in the Mind of Someone Living)」

ハーストの作品は、観る人に恐怖と共に否応なしに死のイメージを実感させます。でもそれはあくまでもイメージであって死そのものではありません。死について本当のことを知っている人はもちろんいませんし、死人に口なしですからだれも教えてくれません。でも、その死についてのイメージをどうにか具現化しようとする試みがこの作品のテーマとも言えるのです。

それにしてもですよ。同じ標本でも、水槽変えて、サメの顔をちょっと怖くして、タイトルつけたら、はい!数億円!ですよ。現代アートってやつは夢がありますね。アイデア一つで成り上がりですよ。

子供と一緒に来た博物館でサメの標本を見ながら、大人のぼくも夢見がちな少年のようになりました。

ちなみに下記の映像は、2012年のテートモダンのダミアン・ハースト展のものです。