「風の森」です。
パチリと記念撮影です。好きすぎて酒の瓶の写真を撮るというよりは、アイドルの写真を撮るファンの心理に近いです。

風の森の記事は、何度か書いてるのですが、改めてご紹介いたしましょう。(このへんもアイドルの良さをもっと多くの人に知ってもらいたいファンの心理)

風の森は、奈良県にある油長(ゆうちょう)酒造で造られています。とても古くからの歴史があり、江戸時代の慶長年間(1596年~1615年)から製油の会社として存在していたそうです。その後1719年にお酒を作り始めて以来、約300年間(!)にわたって日本酒造りを続けています。
そんな老舗酒造メーカーではありますが、この「風の森」ブランドが生まれたのは実は最近でほんの15年前だそうです。

風の森シリーズは「無濾過生原酒」が基本のラインナップになります。醸造アルコールを添加せずに米だけを原料にしている純米酒です。濾過をしません。普通のお酒は搾ったあとに沈殿した澱を取り除いた後に濾過をするのですが、この工程をしないことで、米本来の旨みを残すことを狙っています。そして、火入れ作業をしない生酒であり、加水もしない原酒のままです。
原酒なのでアルコール度数は高くどっしりとした旨みのあるお酒ではあるのですが、飲み口はとても軽やかです。果実のようなフレッシュで華やかな香りと、開栓直後は微量な炭酸ガスを含む爽やかな酸味が軽快さを演出します。

軽いのに深い。爽やかなのにコクがある。この相反する二面性の共存こそが風の森の最大の魅力なのです。
ぼくは、前の記事でその魅力を最大限のリスペクトと共にこう表現しました。「一見トム・クルーズ、中身はウッディ・アレン」と。

さて、写真の3本の話に戻りましょう。

●風の森 秋津穂 純米大吟醸 笊籬採り生酒
●風の森 キヌヒカリ 純米大吟醸 笊籬採り生酒
●ALPHA 風の森 TYPE2 秋津穂 純米大吟醸

日本酒好きにとっても聞きなれない言葉がいくつかありますね。
まず「秋津穂」と「キヌヒカリ」。これは酒米の名前で、酒蔵の地元奈良県産のお米です。酒米として有名な山田錦や雄町を使ったものもシリーズにあるにはあるのですが、風の森の代名詞と言えばやっぱりこの「秋津穂」じゃないかと思います。風の森でしか飲んだことがないので、実際どうなのかはわかりませんが、風の森の味=秋津穂の味と理解しています。(「キヌヒカリ」も風の森でしか飲んだことがありません。)

それから「笊籬採り」。「いかきどり」と読みます。風の森独自の技術で、もろみからお酒を絞る際につるしたり、圧を加えて絞ったりをしないそうです。もろみの中に竹で編んだざるのようなフィルターを沈めて、清酒と分離させるそうです。こうすることで余計な圧や空気に触れることが減り、香りや味の劣化をおさえることができるそうです。

それから3本目の「ALPHA」。これは、文字通りα版のお酒ということみたいです。たまにアプリなんかでα版みたいなものが実験的にリリースされますがそれと同じような感覚です。この「TYPE 2」というのは、秋津穂を22%までこれでも削り磨き上げた超大吟醸酒になります。
歴史ある酒蔵でありながら、ここまで野心的に新しいことに挑戦する油長酒造、恐るべしです。
「伝統と革新」という言葉はまさに風の森にこそふさわしい。

それにしてもこの3本、それぞれが個性的に美味しいです。基本は「一見トム・クルーズ、中身はウッディ・アレン」なんですが、トム・クルーズが“トップガン”だったり“ハスラー2”だったり、はたまた“ミッション・インポシブル”の彼だったりします。ウッディ・アレンも、“アニーホール”や“マンハッタン”や“SEXのすべて”の彼だったりします。
それぞれに微妙に組み合わせが違うのですが、やっぱりトム・クルーズとウッディ・アレンのコンビなわけで、それらのどれもが風の森を体現しています。

もはやぼくにとっての風の森はハリウッドスター。あまりに好きすぎて勝手にファンクラブを作ってしまいたい、そんな今日この頃であります。