表参道で見かけた「銕仙会(てっせんかい)能楽研修所」の外壁。コンクリート打ち放し?と見せかけてよく見ると木目がついています。コンクリートを固める型枠に木目の強い木型を使うのでしょう。コンクリートだけど、木のような優しい風合いを醸しています。

日本古来の建築資材の象徴としての木と現代社会の建築資材の象徴としてコンクリートの融合は、能楽という伝統芸能を未来へ伝え残していく箱という意味において、実にコンセプチュアルな建築ではないでしょうか。

そうコンセプチュアルであります。でもトレンディではないのです。
トレンディドラマ(死語?)のトレンディです。ぼくの青春時代のトレンディドラマにはいつもオシャレな俳優とオシャレな部屋があったものです。オシャレな部屋のアイコン、それがコンクリートの打ち放しの壁です。冬寒そうだなぁとか、結露しそうだなぁとか、夏は暑いのかなぁとか、画鋲を刺せないなぁとか、そこでの生活に思いを巡らせます。コンクリート打ち放しの家に住むということは、いろんなことを我慢するからこそ逆にかっこいいのだと思ったりもします。

我慢してでも住みたい。その禁欲的な精神性にこそコンクリート打ち放しの魅力があるのでないかと思うのです。その視座に立つとコンクリートの打ち放しに木目を足すという行為は、どうしても禁欲感が薄れます。ぼくの憧れるトレンディから一歩遠のくことになるのです。

建築はトレンディである必要はないし、むしろコンセプチュアルであるべきだとは思いますが、ぼくが好きなのは悲しいかなトレンディの方なのです。