初台のやぐら亭は、とても好きなラーメン屋さんです。
カツオ節の出汁が効いたスープは甘みとコクがクセになる味わいです。無化調で優しいお味と表現する人もいるのですが、ぼくはここのスープはかなり挑発的な味わいだと思っています。日本人の脳髄に響く味わいとでも申しましょうか、節の旨味と香りが否応無しに美味いと言えと訴えかけてくるのです。他の店では出会ったことのない唯一無二のスープだと思います。そして、このスープには中毒性があってたまに無償に飲みたくなるのです。
スープだけでなく、柔らかく煮上げたチャーシューも出色の出来です。あぶり焼き大チャーシュー麺なんぞ、幸せというものを視覚化したらこうなりましたという佇まいをしています。

店の看板の写真を撮ってから気づいたのですが、「SINCE 1972」ですと?ぼくが生まれる前からあったのかあ。そんな歴史あるお店とはぜんぜん気づきませんでした。
気づかなかった理由は、店内が小奇麗だからと最初は思っていました。でも実は違うところにその理由がありました。ラーメンそのものが新しいのです。一見、良くありそうなあっさり醤油ラーメン、ですが「昔ながら」という感じがぜんぜんしません。進化に進化を重ねて今に至ったという存在感がこのスープから滲み出ているのです。

このお店は、激辛店としてメディアに取り上げられて有名になりました。「宇宙一辛い味噌ラーメン ほたる」なるものがあります。スープにウオッカを浮かして火をつけて供されるそれは、口から火を噴くほど辛いらしいです。その激辛麺の怖いもの見たさでやってくるお客さんも後を絶ちません。実際に食べログのレビューなんかを見るとその激辛麺の評ばかりです。そしてそんな輩たちは評価の点数まで激辛なんですよね……。

ふつうに支那そば、食べて欲しいなぁ……。絶対美味しいのに。