福砂屋のカステラ。
その最大の難点は携帯性でした。あの直方体の一本を持ち歩くわけにも行きません。小分けにしたのをラップにつつんで歩くなんてのも無粋です。いつでもどこでも食べたいのに、そんなことができなかったスウィーツ、それが福砂屋のカステラです。

そんな福砂屋のカステラに、フクサヤキューブなる商品があることはご存知でしょうか?その名の通りキューブです。立方体です。紙の箱をパカッと開けるとそこには、小ぶりなカステラが二切れ入っています。小腹がすいた時のスウィーツとしては、多からず少なからずの絶妙な量です。味ももちろん福砂屋のそれで、ふっくらしっとりで卵の風味と優しい甘味とがザ・カステラのハーモニーを奏でます。そして、なんといっても底面にわずかに残ったザラメのじゃりじゃり!これこれ!これですよ。福砂屋の代名詞とも言えるザラメじゃりじゃりも健在です。
パッケージも実にハイカラじゃないですか?季節ごとにデザインも変わります。これならOLさんがデスクに置いてもちょっとオシャレな感じがしますよね。単なる食いしん坊だなんてだれも思いませんよ。

さて福砂屋と言えば、老舗中の老舗です。なにしろ「SINCE 1624」ですから。ほぼ四百年も前に創業されたのです。鎖国のちょい前ですかね。南蛮船の皆様よくぞ日本に来てくれました。グラーシャス!と言わずにはいられません。

その長い歴史を経て2000年代初頭に生まれたこのフクサヤキューブは、カステラ史に残る世紀の大発明だと思うのです。おいしいカステラをちょっとつまみたくてもつまめなかった現代人のライフスタイルをフクサヤキューブが変えてしまったのですから。

今後四百年、未来の人々も恐らく食べてるんじゃないですかね、フクサヤキューブを。そうして福砂屋の歴史もキューブ以前と以後で語られるようになるかもしれません。

 

と、遠い目になりながら美味しくカステラをいただくのでありました。