ふたつのアナザー・ワールド展@東京オペラシティ アートギャラリー

ディック・ブルーナの企画展とともに、併設の収蔵展も見てきました。そこで出会った野又穫の作品に惹きこまれました。

ディック・ブルーナという底抜けに能天気な作品をこれでもかと見た直後だったからか、六本木でやっているダリ展にも早く行かなきゃなと思っていた矢先だったからか、その両方だったからかもしれませんが、何気なく足を運んだこの展覧会にくぎ付けになりました。

野又穫は、現実にありそうだけどありえない、どこか不思議な世界観の空想建築とも言うべき作風で知られます。シュールです。ダリとかデ・キリコとかを一瞬彷彿とさせるのですが、もうちょい現実に近い感じと申しましょうか。建築としての描写が恐ろしく精緻なので、実際にそこにあるかのような存在感があります。繰り返し同じスタンスで描かれるその作品群は、水塔を繰り返し写真作品のモチーフにしたベッヒャーのようでもあります。

シュールレアリスム的でありながら、ベッヒャー派のようでもある。そのハイブリッドな立ち位置がこの作家の魅力であると気づきます。

空想的でありながらその確かな存在感により、ぐいぐいとアナザーワールドに惹きこまれていきます。
作品を前にするとその世界に自分がぽつんと一人置かれた不思議な感覚を覚えます。そしてその世界にたった一人存在する自分と巨大な建造物を通して、人間とは何か?世界とは何か?を考えずにはいられないのです。