A5ランクの和牛の炭火焼きを売りにしているイタリアン、「トラットリア・タンタボッカ」さんです。飯田橋にもある肉イタリアンとして有名な「トラットリア・グランボッカ」さんも姉妹店だそうです。

さてそんな肉イタリアンの雄でいただく和牛はさすがに美味いですね。この日にいただいた部位は「とも三角」。後ろ足の付け根あたりの赤身に適度に脂ののった部位です。
美味くないわけがありません。

――これは、イタリア人もびっくりではないか?

イタリアにはA5ランクの和牛はないですよね?和牛ありき。和牛なくしてこの皿で無しと思うのです。
それから普通にイタリア料理としてある牛肉のタリアータなんかだとルッコラと一緒に盛られますが、今回和牛と一緒に盛られているのは春菊です。
これが和牛にめっぽうあうのです。ルッコラも香りの強い野菜ではあるけれど、和牛の脂に合わせるのならもっと香りやえぐみの強い春菊とあわせる方がちょうど良いのです。
ちょっと調べたところ、地中海沿岸の地域では春菊は苦味が敬遠され、食用ではなくもっぱら観賞用だそうです。
日本人は鍋だ天ぷらだと春菊大好きっ子ですが、イタリア人からしたら目が点なわけです。
そもそも肉にしたって、脂たっぷりの和牛よりも、赤身の肉の方がイタリア人には好みなんでしょう。

日本の地で日本の食材で日本独自に進化を遂げるイタリア料理。これぞお互いをリスペクトすることで生まれた化学反応ってやつです。

料理に限ったことだけでなく、何事もエンジンとなるのはリスペクトなんだよなぁ……と、しみじみ和牛を噛みしめる夜でありました。