ついつい魔がさしてしまうということはあるものです。
温泉にぽかーんとしに来たはずなのに、なぜか繰り出したくなってしまいました。

谷川岳に登りたくなってしまったのです。なぜそんなふうに思ったのか?と聞かれるとそこに山があるから、としか言いようがありません。とにかく、ぼくら家族はなぜか谷川岳に向かったのです。

宿泊中の仙寿庵から谷川岳の中腹のロープウェイがある駅までは、車で20分ほどで行くことができます。標高746mのところに土合口駅があり、そこからロープウェイで標高1319mの天神平まで15分ほどで到着します。
そもそも今日は朝から曇り空だったのですが、天神平についた時には、うっそうと霧が立ち込め、景色がまったく見えません。

ここであきらめて戻ればよかったですが、ぼくらはさらに進むことを決めます。二人乗りリフトでさらに200mほど、標高1502mの天神峠へ向かいます。

長女と並んでリフトに座った7分の間に天気がどんどん悪化していきます。さっきまでの霧があきらかな霧雨に。霧雨かと思ったものがあきらかな小雨に。なにしろリフトですから雨を一身に受けますし、途中下車はできません。夏とはいえこの標高ですのでかなり寒くなってきます。すれ違う下りのずぶ濡れで無人のリフトが不気味にぼくらの横を通り過ぎていきます。晴天なら絶景であったであろう景色もまったく見えません。ほど近くの木々以外は白い霧で覆われてしまっています。ただ、これはこれで、長谷川等伯の水墨画のような世界観である意味絶景だなぁとポジティブシンキングでどうにかやりすごします。頂上につくころには雨が本降りとなっており、天神峠のリフト乗り場では立ち往生している人たちが20人ほど途方にくれていました。

本当ならそこからのハイキングコースを楽しむところですが、もちろんそれどころではありません。30分くらい雨宿りをしつつ、雨脚が少しだけ弱くなったところを見計らってUターンです。7分間のリフトは再び長谷川等伯な世界を楽しみながらどうにか寒さに耐えつつ、戻ってくることができました。びしょ濡れになった子供たちは、我々家族4人しかいないロープウェイの中で着替えをして元気を取り戻したようです。なぜか着替えを用意しているという妻の勘の良さは毎度のことながら感心します。

そんなこんなで、どうにか無事に宿に戻ってくることができました。
その後の温泉での、ぽかーんがまた至上の歓びになったということは言うまでもありません。
という予定調和な一日でありました。