ゴラッソ(golazo!)というサッカースラングがあります。これは筆舌に尽くし難いくらいの美しいゴールが決まった際に使います。スペイン語ですが辞書には載っていないそうです。すごすぎて先人たちが創った元々の言語ではもはや表現できないその先にあるもの、それがゴラッソなのです。芸術と呼ばれるものが、言語のその先にある「美」というものを表現するものだとするならば、ゴラッソも芸術のひとつであると言えるのかもしれません。

さて、 サッカー予選リーグ第二戦です。初戦のナイジェリア戦では残念ながらオリンピックに棲む魔物の餌食になってしまいました。しかし、そこから首の皮一枚つながった状態での第二戦では見事なゲームを見せてくれました。いや、魅せてくれました。

初戦で引き裂かれたディフェンスラインはあえて変えずに、システムを4-4-2に変更。ディフェンスラインだけの問題ではなく、チーム全体での守備の修正を図った手倉森監督はさすがですね。
ディフェンスラインが奮起したことはもちろん、チーム全体としての守備が見事にはまりました。
予選では慣れ親しんだフォーメーションだけに、選手の距離感がいいのでしょう、スペースはばっちりケアできていましたし、こぼれ球もひろえていました。守備から攻撃へトランジションが非常にスムーズで、良い守備が良い攻撃へつながる好循環を選手たちは見事に表現していました。

そんな好ゲームを展開するも、さすがはコロンビア、ここぞの決定力はやはりワールドクラスです。残念なオウンゴールもありましたが、あっという間に2点を奪われ万事休すかと思いました。

しかしながらここで決して諦めないのが今回の五輪代表です。予選の時からことごとくそんなゲームを見せてくれていたじゃないですか。真ん中から見事なパス回しでこじ開けたジャガー・浅野のゴールで息を吹き返すと、我らがFC東京の星、ショーヤ・ナカジマこと中島翔哉も黙ってはいません。

相手ディフェンダーを前にしながらも、お構いなしにスーパーミドルを放ちます。ボールはスライディングにきたディフェンダーの足元をかすめ、別のディフェンダーの頭上を越え、さらにはキーパーの頭上から急激な角度で弧を描きます。キーパーの伸ばした手のわずかに上をすり抜けゴールバーの角にあたったボールはゴールマウス内のグラウンドに叩きつけられゴールネットに吸い込まれていきました。

そのショーヤ・ナカジマのボールの軌道は、超自然的であり、神々しいものですらありました。シュートが放たれ、ゴールに吸い込まれるまでのその間、時間が永遠にも感じられ、そこには絶対的で圧倒的な存在の「何か」が確かに感じられたのです。わたしはその「何か」に畏怖の念をもって打ち震え、感動するのです。
そしてその「何か」を表現する言葉をわたしは知っています。それは――

ゴラッソ!