先日、お世話になった先輩と久々に飲みにいきました。土用の丑の日近くということで、渋谷のうな鐡(うなてつ)さんへ。うなぎの「かぶと」やら、「ひれ」やら、「くりから」やら珍しい部位の串焼きを食べることができます。うなぎといえば、精がつく食べ物の代名詞でありますが、これらの怪しい珍味の串焼きたちは、さらに淫びな存在感をもって私の身体と精神にその効果を強烈に訴えかけてくるのです。

さて、土用の丑の日。なんでしたっけ?毎年調べている気がします。それで毎回調べては、そう!そう!そう!そんな話だった!と膝を打つのが恒例となっております。

まず土用から。元々は、古代中国に端を発する自然哲学の五行思想からきています。万物は木・火・土・金・水の5種類の元素からなるという説で、それを季節にも割り振ると土の季節というのがあるそうです。春夏秋冬の各終わりの18~19日を土用の季節に割り当てるそうです。

それから丑の日について。「丑」は十二支の「子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥」の丑です。土用の季節の丑番目の日が、「土用の丑の日」ということになるそうです。

では、なぜ、夏の土用の丑の日にうなぎを食べることになったのか?

幕末の学者として有名な平賀源内が、夏場にウナギが売れないので何とかしたいと近所のウナギ屋に相談されたのがきっかけだそうです。源内は、「本日、土用丑の日」と書いた張り紙を張り出すように鰻屋に指示しました。するとたちまち鰻が飛ぶように売れ店が大繁盛するようになり、現在でもその風習が続いているそうです。

これって、大手菓子企業が仕掛けた資本主義的陰謀論として語られるバレンタインデーとかホワイトデーとかと構造は一緒ですよね。

なんとなく、土用の丑の日って伝統的であがりたい祭事感すらあったのですが、元を正せば、町の鰻屋のこじつけ広告だったんですね。

平賀源内を日本最初のコピーライターと言う人もいるみたいです。
そんな彼は、博物学者であり、鉱山技師であり、電気工学者、化学者、西洋画家、小説家や劇作家でもあったわけですし、恐るべきマルチクリエイターと言わずにはいられません。

そんな偉大の先人を尊敬と畏怖の念をもって偲びつつ、今年もおいしくうなぎをいただくのでありました。